為替アナリスト雨夜恒一郎氏が、独自の視点で今後の為替相場を展望します。
更新日:毎週月曜日・水曜日・金曜日
ギリシャの再選挙確定、ユーロ離脱懸念強まる!
更新日時:2012年05月16日 9:26
【ドル円】
■週末に野田首相が米WSJとのインタビューで為替単独介入も排除しないと示唆したことを受けて、月曜日の東京市場では80.19円まで上昇。その後ギリシャの再選挙の観測が高まりユーロ円が102円台まで下落したことから、79.68円まで下落しましたが、昨日は米5月NY連銀製造業景況指数が+17.09と予想の+9.00を上回ったことや、5月NAHB住宅市場指数が29と予想の26を上回ったことが好感され、80円台を回復。ギリシャの組閣断念を受けてユーロが対ドルで下落したことや、FRBの政策動向に関して米シンクタンクがタカ派的なレポートを流したとの噂もあり、一時80.34円まで上昇しました。
■ギリシャの再選挙が確定し、リスク回避ムードが一段と強まる中、欧州通貨や資源国通貨が売られ、安全通貨のドルと円が並行して買われるため、ドル円としてはあまり動かない時間帯が続いています。今月に入ってからユーロドルは1.32ドル台後半から1.27ドル台へ約4%も下落していますが、この間ドル円は80円を挟んだ上下50銭ずつのレンジにほぼ収まっています。取り組み妙味が低下し、市場の関心も徐々にドル円から離れていきそうな局面。ここはあまり強い方向感を持たず、80円前後でのレンジを意識して小刻みな売買に徹するしかなさそうです。
■今夜は4月25-26日分のFOMC議事録が注目ポイントです。当時のFOMC声明では追加緩和への言及はなく、経済見通しで12年の成長率予想を上方修正するなどややタカ派的と受け止められました。米著名シンクタンクがタカ派的な見解を示しているとの情報もあり、来月の追加緩和観測を後退させる内容となるかもしれません。対他通貨でドルが堅調となっていることもあり、80.50円前後までの上昇余地は見ておいたほうがよさそうです。
■一方で、やはり警戒すべきはリスク回避・株安・債券高の流れがさらに強まることでしょう。ギリシャの再選挙は想定通りのシナリオとしても、すでにユーロ圏内ではギリシャの離脱に備えた動きがあると言われており、さらに悲観的な見方が広がる可能性が大です。またJPモルガンの巨額損失発覚を受けて金融業界に対する疑心暗鬼も広がっており、株式市場の不安感を示すVIX指数は1月以来4か月ぶりに22台に跳ね上がっています。米国10年債利回りは1.7%台まで低下していますが、これ以上株安が進めば、昨年9月に記録した過去最低の1.69%を更新する可能性も出て来るでしょう。となるとドル円も当時の水準である75-76円台を目指す展開となってもおかしくありません。目先は中立としても、中期的にはやはり下値不安が払拭できず、戻り売りスタンスを維持したいと思います。
【ユーロ】
■週末のギリシャの連立協議が失敗に終わり、再選挙の可能性が高まってきたことや、独主要州の議会選挙でメルケル首相率いるCDUが大敗したことから、月曜日早朝には対ドルは1.28台、対円は102円台に突入。スペインの銀行のECBからの借り入れが4月に過去最大となったことや、ムーディーズがイタリアの銀行26行を格下げしたことも重石となりました。昨日は、独1-3月期GDP・速報値が前期比+0.5%と予想の+0.1%を上回ったことから一旦1.2871ドル、102.88円までショートカバー。ユーロ圏全体のGDP・速報値も前期比±0.0%と予想の-0.2%を上回り、リセッション入りをかろうじて回避しました。しかし独5月ZEW景気期待指数は+10.8と予想の+19.0を下回ったことから上昇も続かず。パプリアス・ギリシャ大統領による組閣に向けた調停が不調に終わったと報じられたことや、ポルトガルがギリシャのユーロ離脱に備えている可能性があるとのFT報道もあり、1.2722ドル、102.05円まで下落しました。パプリアス大統領が「ギリシャの銀行から14日に7億ユーロが引き出された」と発言したと伝わったことも、富裕層のギリシャ離れや取り付け騒ぎへの警戒感につながったようです。
■ギリシャの再選挙実施が確定したことで、反緊縮財政勢力の勝利→財政協定破棄→金融支援停止→6月末で本格的デフォルト・ユーロ圏離脱という展開が現実味を帯びてきました。ラガルドIMF専務理事は昨日、ギリシャがユーロ圏から離脱すればかなりの混乱をきたすと警告し、こうした事態に備えておく必要があるとの認識を示しました。再選挙の日程はまだ正式に決まっておらず6月半ばということですが、それまでは最悪のシナリオを消化しながらユーロは下値を拡大していくことになると思います。
■また金融不安を抱えるスペインの国債が急落し、10年債利回りは危険水域とされる6%を上回り6.35%まで上昇しています。イタリアもスペインほどでないにせよ似たり寄ったりの状況。PIIGS各国は緊縮財政で景気対策が打てず、景気面でもドイツなど優等国との「南北格差」が広がりつつあります。スペインが金融支援要請に追い込まれるリスクだけでなく、反緊縮財政の動きが財政劣等国全体に広がっていくリスクも警戒する必要があります。
■昨日就任したフランスのオランド大統領は、欧州の財政協定見直しを改めて主張。緊縮財政一辺倒の政策に成長促進策を追加するよう求める方針を確認しました。メルケル独首相の初会談ではさすがに路線対立が表面化することはありませんでしたが、蜜月関係だった「メルコジ」と違い、「メルコランド」はかなり政策スタンスに隔たりがあり、今後ユーロの求心力低下をもたらす可能性は小さくありません。
■チャート上も、対ドル・対円とも典型的なヘッドアンドショルダーを描きつつネックラインを完全に割り込んでおり、下落トレンドが一段と明確になっています。このままトレンドが継続すれば、遠からず1月の安値である1.26ドル台、97円台を試す展開も十分考えられます。対ドル・クロスとも、引き続き弱気スタンスで臨むのがいいでしょう。
【豪ドル】
■月曜日は、ユーロの下落や株安・コモディティー安につられ、対ドルはパリティー(1.00)を割り込み0.9955ドル付近まで下落、対円も79.40円付近まで下落しました。週末に中国人民銀行が預金準備率の0.5%引き下げを決定したものの、目立った反応は見られませんでした。さらに昨日は、豪準備銀行(RBA)議事録で中国経済の成長鈍化が継続するとの見通しが記され、「成長回復に50bp利下げが必要だった」との見解が示されたことや、ギリシャのユーロ離脱懸念を背景にリスク回避の動きが強まったことから、対ドルは0.9925ドル付近へ続落しました。対円も79円台で上値の重い展開が続いています。
豪準備銀行議事録→http://bit.ly/JaA2Us
■引き続きリスク回避ムードを背景に、株安・コモディティー安・資源国通貨安の連鎖が予想され、豪ドルに対してもさらなる下落に備えておく必要があります。世界的な景気減速懸念を背景に原油相場は93ドル台に突入し年初来安値を更新。昨年12月16日の直近安値92.71ドルも視野に入ってきました。安全資産のはずの金も換金売り圧力に押されて3日続落となっており、こちらも年初来安値を更新中。対照的に、「ドルインデックス」は81を突破し年初来高値の81.78に迫っています。当面はリスク資産を敬遠し、最も安全な資産であるドルと円のキャッシュに逃避する動きが続く見通しです。豪ドルなど資源国通貨に対しては引き続き弱気スタンスで臨むのが賢明でしょう。
最新10件の記事一覧
2012年05月14日
2012年05月11日
2012年05月09日
2012年05月07日
2012年05月04日
2012年05月02日
2012年04月30日
2012年04月27日
2012年04月25日
2012年04月23日
為替アナリスト 雨夜恒一郎
20年間以上、外資系大手銀行の外国為替業務要職を歴任。
「ユーロマネー」誌における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴を持つ。在籍時から各種メディアのコメント多数。フリーランスの現在、独自の鋭い視点で為替相場の情報を提供中。
当コラムに関するご意見やご感想、筆者への叱咤激励のメールは下記のアドレスへお願いいたします。
fxdesk@monexfx.co.jp
- 掲載されている内容は、金融・為替市場に関する情報の提供を目的とし、勧誘を目的としたものではありません。また、その正確性および完全性を保障するものではありません。最終的な投資決定は、お客様ご自身の判断で行われますようお願いいたします。万一、この情報に基づいて取引をされ損害を被った場合においても、当社及び本資料中に引用・掲載した情報の提供者は一切責任を負いません。本件に関するお問い合わせはこちらまでお願いいたします。
お問い合わせ窓口
![]()
![]()








