ウィークリー・コラム

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高野 進吉 ウィークリー・コラム
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高野 進吉 (当社為替ディーラー)

高野 進吉 (当社為替ディーラー)

1991年から外国為替市場に携わる古参の為替ディーラー。短資会社で身につけた為替に関する深い鑑識眼と、長年の為替ディーリング経験を活かし、簡潔でわかりやすいマーケット分析を皆様にお届け。

9月13日 木曜日 トルコ政策金利 第66回

更新日時:2018年9月14日 10:00

8月10日のトルコ・リラ(TRY)急落以降不安定な状況が続いているトルコ共和国の政策金利の発表が近づいた。
8月24日の「トルコリラ(TRY)の最近と今後」に続き今回もTRYに注目したい。

  

前回の結果

7月24日 20:00 政策金利発表

事前予想 結果 前回
1週間レポレート 18.75% 17.75% 17.75%


(日本時間)

 

当時の市場環境

トルコ中央銀行は、5月23日の臨時政策会合にて3%の緊急利上げ(13.50%→16.50%)を実施、5月25日には国内輸出業者に対し、「USD建て債務をTRYで返済することを認める」と発表。6月7日には政策金利を16.50%から17.75%へ1.25%の利上げを行った。

これらの材料を手掛かりに、年初の1TRY=30円近辺からかなりきつい下落基調が続いていたが、1TRY=22円台半ば~24円台半ばのレンジで一旦安定したかに見えた。しかし、7月18日には、トルコ裁判所がテロやスパイの罪に問われた米国人アンドリュー・ブランソン牧師の収監継続を決定、米国との対立姿勢はより鮮明なものとなり、TRYに対する不安感が高まった。

 

発表当時の動き

TA20180907_1.png

TRY/JPY(出所:Bloomberg)

結果は事前予想を裏切り「17.75%据え置き」。トルコ中銀に政治的圧力がかかった可能性もあり、想定外の結果と同時に中銀の独立性に対する懸念からTRY/JPYは下落。発表前の23.30円近辺から22.50円近辺まで一瞬で売られた。

 

最近の主な動き

TA20180907_2.png 

(上段:TRY/JPY 下段:USD/JPY  1時間足 当社:Monex Trader FX 比較チャート)

 

7月24日 トルコ中銀政策金利据え置きを決定

 

7月25日 2016年7月に起きたトルコクーデターで、反政府勢力を支援したとして同年10月に逮捕・拘束された米国人牧師アンドリュー・ブランソンを米国が解放するよう求めている問題で、ブランソン牧師は7月25日に自宅謹慎措置に変更され軟禁状態となった

 

7月26日 米国務省は自宅軟禁措置を「十分でない」とし、トランプ大統領は牧師の早期解放を促すため、北大西洋条約機構(NATO)同盟国でもあるトルコに対し大規模な制裁を発動する考えを表明

 

7月31日 ブランソン氏の自宅軟禁からの解放の申し立てをトルコの裁判所が退ける

 

8月2日  米国がブランソン牧師拘束継続に対する制裁を発表
米国はブランソン牧師の拘束に関与したとしてトルコのギュル法相とソイル内相に米国内の資産を凍結し、米国民との取引を禁止する制裁を科した

 

8月4日  エルドアン大統領は8/2の米国の制裁に対する報復として「米司法長官と内務長官が保有する資産が
トルコ国内にあるなら、その資産を凍結するよう指示した」と発表

 

8月8日  トルコの交渉団がワシントンにてブランソン牧師問題等を協議も、不調に終わる
トルコのタネル・ユルドゥズ・エネルギー天然資源相は、トランプ大統領が核合意離脱に伴う制裁を
再発動したイランから、天然ガス輸入を長期契約に従って今後も継続すると述べた

 

8月10日
5:00頃 トランプ米大統領がトルコへの関税引き上げを承認
トランプ米大統領は、トルコからのアルミニウムと鉄鋼の輸入関税を倍に引き上げ、アルミニウム20%・鉄鋼50%にしたことを承認したと表明
21:30頃 アルバイラク・トルコ財務大臣は新経済計画発表
「持続可能で健全な成長を実現する」
「中銀の独立性はトルコ経済に極めて重要。金融政策の完全な独立性を確保することが重要」

 

8月13日
5:00 アルバイラク・トルコ財務大臣 市場の懸念緩和に向けた行動計画策定を発表
トルコ銀行規制監督庁はトルコ国内銀行のTRYと外貨のスワップ取引の総額が銀行の法定自己資本の50%以下とし、超過している場合は新規取引を停止すると発表

14:00 トルコ中銀声明発表
「銀行が必要な流動性を供給する」
「金融安定維持のためにすべての必要な手段を講じる」

 

8月15日 トルコ裁判所がブランソン牧師の解放を再度拒否

15:30頃  スワップ取引の総額を銀行の法定自己資本の25%以下に引下げ
トルコ銀行規制監督庁は、13日に発動したTRYと外貨のスワップ取引の総額を銀行の法定自己資本の50%から25%以下に引下げ

 

8月16日  ムニューシン米財務長官「ブランソン牧師を解放しなければ追加制裁を科す用意がある」

 

8月17日  米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)はトルコの格付けを「BB-」から「B+」(見通しは「安定的」)に、同ムーディーズは、「Ba2」から「Ba3」(見通しは「ネガティブ」)にそれぞれ引き下げたと発表

 

8月29日  トルコ中銀は「銀行間市場での翌日物資金の借り入れ上限を13日以前の2倍の水準にする」と発表

 

8月30日  
20:35頃  トルコ中銀キリムチ副総裁が辞意を固めたとの報道

 

8月31日  トルコ政府は「リラ建て預金の源泉徴収税率を引き下げる半面、外貨建てについては税率を引き上げる
措置を講じる」と発表

 

9月3日

16:00   8月トルコ消費者物価指数(前年比)発表

事前予想 結果 前回
CPI(前月比) 1.84% 2.30% 0.55%
CPI(前年比) 17.60% 17.90% 15.85%

16:30頃 トルコ中銀声明発表

「物価安定のために必要な措置を行う」

「インフレは重大なリスク。今月の政策決定会合で金融スタンスの調整を行う」

 

TRY下落の背景

悪化するインフレ率と金融政策との不整合、中銀の独立性への懸念

 

上述の通り、9月3日発表の8月消費者物価指数は、事前予想(17.60%)に対し17.90%(前回発表値 +15.85%)
という結果となり、インフレ率の上昇が依然として続いていることを示した。通常この様な局面においては、利上げによりインフレを抑制するのが一般的な考えだが、エルドアン大統領は「インフレの理由は高金利にある」としてトルコ中銀の利上げを容認しない状況が続いており、TRY相場下落の一因となっている。また、この様な、中央銀行が担うべき金融政策運営に対するエルドアン大統領の介入は中央銀行の独立性への懸念を生んでいる。

また、9月3日には金融政策委員会のメンバーであるリムチ・トルコ中銀副総裁の辞任が報じられた。同氏は一部では利上げを主張していたとも見られ、これも利上げを容認しないエルドアン大統領と中銀との関係、独立性懸念への象徴的な出来事と言える。 

 

対米関係悪化

2016年7月にトルコで発生したクーデター未遂事件において、首謀者として、トルコ政府が在米イスラム教指導者ギュレン師の引き渡しを要求したのに対し米国が応じなかったことを契機として、トルコと米国との関係は悪化の一途を辿っている。
米国は、トルコ当局が拘束している米国人アンドリュー・ブランソン牧師の解放を要求し、トルコ政府は刑務所拘留から釈放、自宅軟禁へと措置を軟化した。米国は牧師の米国への帰国、完全解放を求めた。これに対しトルコが応じない姿勢を見せると、米国は制裁としてトルコ2閣僚に対する資産凍結を発表。一方でトルコは、上記制裁に対する報復として、存在するとは思えないが「米司法長官と内務長官が保有する資産がトルコ国内にあるなら、その資産を凍結するよう指示した」と発表。
これに対しさらに米国は、8月10日にトルコからのアルミニウムと鉄鋼の輸入関税を倍に引き上げ、アルミニウム20%・鉄鋼50%にしたことを承認したと表明。

同盟関係にある米国とトルコの二国間において、極めて異例な「制裁の応酬」が行われている。

 

FRB利上げ、USD高圧力とそれに伴う新興国からの資金の流出
米国の金利上昇によって新興国から資金を引き上げる動きが強まった。これにより、トルコのみならず新興国通貨は下落している。

 

TRYの下落には様々な要因が存在しているが、いずれもエルドアン大統領の方針、立ち回り方による部分が多く、逆に言えばエルドアン大統領の出方次第では局面は大きく変わることは考えられる。

まずは、次回の政策会合にて利上げが行われるかどうか。行われる場合にはその利上げ幅がどの程度になるか。ここに注目が集まる。

足元では、9/3の消費者物価指数(CPI)発表の直後、トルコ中銀により「物価安定のために必要な措置を行う」
「インフレは重大なリスク。今月の政策決定会合で金融スタンスの調整を行う」という声明が発表されている。

このような声明を出した以上、利上げの可能性は上がっていると思われるが、据え置きとなった場合はかなりのインパクトがあり、TRY/JPYの10円割れも視野に入るだろう。

逆に利上げとなった場合でも、利上げ幅によって市場の反応は変わることが想定できるため、早急に飛びつかず市場の反応を確認し、慎重な判断が必要となるだろう。

 

事前予想 結果
1週間レポレート 17.75%

発表は9月13日 20:00(日本時間) 


事前市場予想は本稿執筆時点(8月23日)では発表されていないため、当社HPでご確認ください。

 

さて、1年少々の間、主に経済指標に焦点を当て、コラム書いてきましたが、今回をもちまして終了させて頂きます。お読みになった方々の取引のお役に立っていればといつも思っておりました。皆様のご多幸を切に切に祈っております。

Cheers
Shinkichi Takano

 

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高野 進吉 プロフィール

高野 進吉

1991年よりトウキョウフォレックス株式会社で為替スポット取引や先物取引のブローカーを歴任後、2006年より同社にて為替証拠金事業における為替ディーラーとして活躍。2015年より現職。
短資会社で身につけた為替に関する深い鑑識眼と、長年の為替ディーリング経験により、社内ではディーラーのパイロット(水先案内人)的な存在感を発揮する。

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